ズックスター





















ローソンよって、見たら食べたくなったウェハースとお昼の赤いきつねとCCレモン。
スカッと晴れた空が、更に私の気持ちを盛り上げる。
コンビニ袋をブンブン降って元気に歩く歩く。
すれ違った親子に、ちょっと変な目で見られちゃった。テヘ。









なんだかいい事ありそうな、青空が悪いの。












「おしたりー、来たよー」










想像以上にボロッちぃアパートの木のトビラを叩く。
チャイム付いてないのなんて普通に思える程の築ウン年。




ドアノブが取れたらどーしよーとか考えちゃう。












「おう、よー来たな」
「おじゃましまーす…」






玄関に一体何人住んでるんだって位の靴靴スニーカー、サンダル靴。あ、下駄?

















公共料金の明細が踏まれてしわくちゃになってた。










「下駄箱買いなよ」
「なんで?別にええやん」






右を見ると小さなキッチン、サラダ油とパスタが入ってるケースとインスタントコーヒーの瓶。
何かをかき混ぜて、そのまま放置されたスプーンは少し錆びてた。
フライパンがガス代に置かれたまま。










「んもー!なんか貧乏っちぃよ!?」
「やかましい、文句言うなやー」









忍足は古着のジーンズと抹茶色のTシャツを着てた。
モロ部屋着。
畳の居間、小さいテーブルと敷きっぱなしの平ベったい布団、部屋全体は昼でも薄暗い。
なんか恐かったけど、その布団の上に座る。






「こんなもんやで、一人暮らしの部屋なんて」
「嘘だー!私だったら、もっと綺麗に使うよ。神経質だもん」
「嘘こけ。を神経質って言うたら、全人類が神経症で病院通いやわ」
「どーでもいいけど、お布団くらい畳みなさいよね」
「カレー喰った皿、一週間放置してオカンにどやされたに言われたないわ」
「…まだその話覚えてたんだ」









窓を開けるとカーテンが揺れる。
ふわっと膨らんで、また萎む。
近所の公園で野球をしてる子供の声。
口の中で分離する不味いウェハースのクリームを、舌でベロっと舐め取ると忍足にはしたないと怒られる。






「私さぁ、忍足の名前。最初なんて読むかわかんなかったー」
「最初、なんて読んだ?」
「いいよ、失礼だから」
「ええよ、教えて」
「おしのびくん」
「忍者かいな」









ペディキュアを施した私の足の指を物珍しく見てる。
これは岳人に命令して塗ってもらったの(エヘン)




「ハットリ君のお父上の名前、知らないくせに…」
「はぁ?シンゾウやろ」
「ブーーーーー。ジンゾウでした」
「え。シンゾウっておったやん!」
「それは赤いの。弟だよ」
「俺、ケムマキ派やし。」









二人でケラケラ笑って、私が買って来たうどんを啜る。
あそこの駅のそば屋が上手いとか、正岡子規が月面写真みたいだとか。
気の迷いの話。とか。





「忍足さぁ、好きな女いないの?そういや聞いてなかった」
「べつに。あんま考えてへん」









「なんか年上のお姉様みたいな人が似合いそうだよねー!うん、前も友達とそんな話してたんだ」












は?」


鼓動がひとつ飛んだ。
一瞬で顔がカァッと熱くなる。












あんたの事が好きなんだけどね。





な、何か喋らなきゃ…。











「いるよー」
「彼氏か?」
「彼氏いないよ、きっと無理だもん」
「そうなんや」



なんとか熱を冷まそうとジュースを飲む、ちょっと炭酸が抜けておいしくない。
忍足はコップに垂れた水滴を指で拭っていた。
やけにテーブルの上にクリップが散乱している。















「忍足はさぁ、付き合った事あるの?」
「いちお、あるで」
「えー!いいね、上級者って感じ。ぎゃー!」
「でも、すぐ別れてしもたわ」
「そうだったんだぁ、なんで?」
「俺、他の子の事好きになったから別れた」
「潔いね」








首に掛かる髪を結んで、忍足は窓の方を見る。
眼鏡の奥の目は何見てるんだろって思った。
大きく膨らむ白いカーテン。
モンローみたい。





どっかで救急車のサイレン。
本当に良い天気。


























「俺な、の事好きっぽい」
「はぁっ!?」
の事、好きになったから、そいつと別れた」
「あ…え…っと…」












なんか普通に言うんだなと面喰らった私の赤い顔が、ベージュのフレームの小さな鏡に写って見えた。














眼鏡を中指で押し上げて、今までみた事ない真面目な顔つき。
すごいカッコいいとか思う…。













、何か言えや」








「私、忍足とやっと両思いになれたっぽいよ…」


「そか、良かった」






私の肩を掴んで、抱き締める。
真横に忍足の首筋、白くて石鹸の匂いがした。















「今日は、なんかいい事ありそうやなーって考えてたんや」

「以心伝心」

「なんやそれ」






「なぁ、のおっぱい触らせて」
「い…えっ?」






「あはは、その顔おもろい」
「本気だと思ったじゃん!」
「じゃあ明日、揉むわ」
「明日!?」












恋人記念のキスは二酸化炭素の味でした。


















  終













忍足が変換で出ません。















Created by DreamEditor
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ