ラブボンボン2
ベンチに座る私、目の前に海堂くん。
カサカサと足下で落ち葉が鳴って、会話も途切れ途切れで。
私は彼の肩ごしの景色を見ていた。
冷たい風が目にしみて目が僅かに潤む。
公園の植木。
寒空の下に散った椿の、強烈なピンクの花弁の上を綺麗に猫が歩いてた。
「俺、今日 先輩に逢いたかったんです」
「なんで？」
「今日、あれじゃないすか…」
「あれ？何？」
私を見て黙った。
その沈黙がもどかしくて、少し恐くて興味とかもあって。
問いただす強さは私には無く、彼が言い出すまで待とうと思った。
「あ…これ…！あの、何買っていいかわかんねぇから適当なんすけど、
嫌だったら捨てて下さい、そんじゃ…失礼します！」
テニスバックから取り出したオレンジの箱。
乱暴に私の手のひらにそれを押し付け、走ってどっか行っちゃった。
さっきまで怒ってたかと思ったら…
呆気にとられていた私も、そのうち私も痛い膝を無視して駆け出してた。
なんだ、あの子。
あの仕種は彼の照れ隠しの時の癖。
思い出したから追いかける、早い、何処？
「ちょっと待ってよー！海堂っ…」
痛た、絆創膏に血が滲む。
冷たい空気が肺を掻き毟る、もう走れないよ。
喉はヒュウヒュウ悲鳴をあげてる。
「もーっ！ムカつくっ…」
肩で息をして、立ち止まる。
なんなのよ、もう。
困る、なんかドキドキ。
走ってドキドキ。
貰ったオレンジの包み紙が妙に可愛くて笑いそうになる。
これってバレンタインのチョコレートじゃないの。
周りを見ても誰もいない、暗みががった冬の空が私の上に広がるだけだった。
「こら、海堂っ…出てこいっ。もう動けないよぉ…」
高見に上っても見回す元気もなく、その場に座り込む。
息が切れて苦しくって思わず目を瞑る。
芝生を踏み締める音、うっすらと目を開けると海堂くんがこっちに近付いて来る。
すごく申し訳なさそうな顔をして私を見下ろしてた。
「言い忘れた事…」
なんで息乱れてないんだよ、体力バカ。
すごくムカムカする。
「忘れた事？…あんた私が呼んだら返事、しなさいよね…」
言葉が途絶える、苦しいんだよ。
「先輩、俺…」
「なによ…」
「先輩、好きです」
なんで、こんな状況で告白してんの？
もう疲れて動けない。
何？
作戦なのかな、ちくしょう…
いい加減にしろっ！！
「連れて帰ってよ…膝、また血出てきちゃった…」
「はい」
「言い忘れてたけどさ、バレンタイン。明後日だから…」
「返してください。」
「やだ」
立ち上がり私は海堂くんと向かい合う、厚い胸だな。
冬の匂いが風にのって馨る。
なんか、この子ほっとけないとか思えてくる。
「学校違うけどさ、今度また逢おうよ」
「学校には、来なくていいすよ」
「なんで、そーゆう事言うかな」
「…先輩の事、狙ってる奴多いっす」
「じゃ、海堂くんが私の彼氏になればいいのに」
「俺、そのつもりで言ったんすけど」
「うん」
芝生の小高い丘で私は海堂くんの顔を見て笑った。
二人とも頬が赤い、なんか一緒なのが嬉しい。
風上に彼がいるおかげで体は温かい。
無償に抱き締めたくなっちゃったかもなぁ。
どんな顔して抱き着いたらいいのかな。
「先輩…付き合って下さい。なんつーか、ずっと前から好きでした…」
「私なんかでよかったら…うん、よろしく」
手を差し出すと彼は戸惑いながらも握り返してくる、私の方が体温が高かった。
海堂くんはひどく恥ずかしがって、指に力が入りすぎ。
歩く度、救急箱がガラガラ鳴る。
二日後にデートしようと約束して別れる。
学校終わったら二人きりで会おうねって言う。
１４日は私も学校休もうかなって友達にメールした。
普通にラブラブが描けません、私。
バレンタインだから許して下さい（え？）
→続き
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