プディング




















「ねぇ、ドコ行くの?」

「あー?」

「なんか、寒いんだけど」

「うん」



























チカチカと頼り無い蛍光灯が点滅する地下鉄のホーム。
地上からか何処からか、強い風が私のマフラーを揺らす。
ゆったりと歩いて、恐ろしく長い通路を二人きり。
足下の剥がれかけたタイルがモップから垂れる水で濡れていた。
視界が黄色いのは何故だろう。



























「桃、寒いよ」

「冬、だからな」

「ファミレス行きたい、コーンポタージュ飲みたい」

「ここら辺に、そんなんねぇよ」

「じゃあ、地下鉄乗って何処か行こうよ」









季節はずれの誘蛾灯が青白く光る。
小さな羽虫の死骸。
私達は何がしたいのか。









「なんで俺なの?」

「べつに。」





「なんで俺なんだよ」



















「別にいいじゃん…」









並列するロッカー。
乾いた風と苛立つ空気。
地上に上る階段に足をかけた桃のコートの端を掴む。





「前から、好きだったんだ」


























「あんがと」

















「付き合いたい…」

「俺、そういうの苦手」

「欠落してる、気持ちが」

「そうかな」
















昨日、キスをした。
さほど驚きもせずに私を見る桃。
電柱の影は寒かった。
家に帰ってオナニーして寝た。









「私じゃダメなのかな」

















「そういう問題じゃなくて…今更だろ?
俺はと付き合うなら他の女と遊んでた方が楽でいいんだよ」

「あたしは桃とセックスしたい」

「一回ヤッちまえば、自然に情とか出てきて付き合えんだろ。
惚れんのは簡単だ」










「そういうのイヤ」

「俺は男だから」

「どうしてもダメ?」

「なにそれ…」



















私ならアナタを救えると思ったし、アナタなら私を守ってくれると思ってた。
思い込みだけの自信がサラサラと崩れる。
自分の言葉がゴミみたいだ。


















「俺は基本的に女なんて信用してねぇんだよ」








私は女なんての「なんて」で涙を流した。
蛍光灯の光りが涙で倍増されて眩しい。
桃はそんな私を見て、でも女は好きだけどなと急いで付け足した。












「だってよ、俺がと付き合ったら…今までじゃなくなるんだよ、ダメになる」

「どうして」










「俺は独りでいる方が都合がいいんだ」

「私は桃がいないとダメなの」

「一応、特別扱いしてんだぜ?」

「意味のない特別は嫌だ」



















きっと桃と付き合ったら、私は壊れてしまうと思う。
彼はそれが言いたかったんだとも分かっているの。
クラスメイトで毎日楽しい、笑うトコも同だしカッコいいんだもん。
それと、私にくだらない母性を感じさせてくれた事。
アイデンティティ、糞食らえ!!
私は誘う汁を垂れ流す、寄って来るのは劣性ばかり。
その内ガビガビになった私の心、乾いて縢れるには、まだ時間が足りない。
結合、思い違い、涙と垢。
臭い妄想、股に手を伸ばす。
汚いのが大好き、ピンクに醗酵する体。



























「俺も、たぶんが好きなんだとは、思ってる」













「ねぇ、」








地下鉄を待つ間、少しだけ手を繋いだ。

















  終。

















一時間のなぐり書き!
桃城は悪くってカッコいいイメージ。
頭が良くって回避が得意、見せ掛けるのが大好き。
でも、子供。








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