赤い教室

































見てごらん。
天使のいない空。
まるで非ユークリッド幾何学模様。
私の心は揺れて落ちる。
























「甘い…」

「そらケーキは甘いの」

「(なんか目眩してくる)」

「残そうか?バタークリーム以外でって伝えれば良かったな」









教室でチョレートケーキを食べる。
バタークリームが不味い。
今日の練習はもう終わって、二人きりの教室。




ケーキを片手に窓を開ければ、純白のカーテンがゆらりと旗めく。








「なんで今日、一緒にケーキ喰ってんスか」

「部活おわったらさー、すっごい疲れちゃって」

「だから、なんでケーキ」

「ケーキ喰いたいって騒いだら桃が買って来てくれたの、
 こないだオゴってもらった借りだって」





私は窓際に腰掛けて上履きをパカパカさせた。
爪先に書いてあるリアルなアフロタモリ(友達に描かれた)も冬の夕日に染まってる。
海堂くんはケーキを半分かじっただけてトレーの上に余していた。








先輩、喰い方キタねぇ…」

「えっ、ついてる?」

「ついてる」











熱に体が壊れそうだった。
好きな男と一緒にいて感情を揺らがせない程、大人じゃない。
私は数カ月前から彼に恋心を抱いていたのだ。
くやしい位にキレイな太陽は寡黙で、たまに聞こえるのは校内放送。
残りのケーキを一気に口の中で詰め込む。
おいしくないけど、頑張って飲み込んだ。
これは気合いだ。(変なの)






冴えろ、私。
ドカンと素敵にコクっちゃって
当たって砕けてしまえ!(砕ける予定ないけど)












「なんつーか調査みたいなー…あのね、」

「なっ、調査?えっ?」

















「あぁゴメン。海堂…好きな子とか、いんの?」









めちゃくちゃキョドってるよ!
余裕なさすぎ私。
形容しがたい表情で私を見てる、見てる。




「何言ってんスか、先輩たまに訳わかんねー」

「わっ…訳わかんないとか言うな!人が折角っ…     」

















ギュウッと奥歯を噛み締めたら、海堂くんが酷く驚いた顔をしたので
私もビックリしてみた。








「なんで、泣いてんスか…ったく…」

「えぁ?え…あぁ…」





彼の存在が大きすぎて、好きすぎて枷が外れた。
私はしばらく立ち尽くして、彼が差し出した折り目の綺麗なハンカチを受け取る。
涙がとまらなく、首筋まで垂れる。
聞かれたく無いと思えば思う程、漏れる嗚咽。
















「先輩、アイツと付き合ってんじゃないんスか?」

「うえ?グズグズ…」

「アイツ、桃城っス」

「な訳ないじゃんかぁ…」

「バカみてぇ」

「なんか、とまんない」







海堂くんは机の上のケーキを見ながら、小さな舌打ちをした。
そして睨むように私に視線を投げかける。




「鼻水、垂れてますよ」







急いでティッシュを探して轟音をたててかんだ。 恥ずかしいなぁ、もう。







「あんまアイツとくっつかないで欲しいんスけど…」

「はい…すいません」

「誤解すっから」

「わかりましふぁ」







教室の前を駆け抜けてく足音に体を竦ませる。
彼はケーキをゴミ箱に放り込んだ。






「だからっ…」

「ハイ」

「俺、先輩にホレてんスけど…」











彼のちょっと細い指が私の涙を拭うので、私はしばらく泣きやめなかった。



















終ります。






Created by DreamEditor
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ