日曜日。 


「デカイ水槽…」

俺は今、大石先輩の部屋にいる。

先輩の部屋は、予想通り…というか、すごく綺麗だった。
大石先輩がお茶を入れに行ってる間、俺は水槽の中のキレイな魚に見入っていた。

カチャ、とドアの音と共に先輩の声。
「水槽気になるのか?」

俺は魚に目を向けたまま答えた。
「…キレイっスね」

「それ、俺の趣味なんだ。気に入ってもらえて嬉しいよ」
「ふーん」


「そう言えば…英二が初めてうち来た時も、水槽にかじりついて見てたっけ…」


懐かしそうに言う。
エージ先輩は何回くらいこの部屋に来たんだろ…。

この部屋で…二人で何したのかな…。



水槽、見るのやめた。
床に座って、先輩の入れてくれた紅茶をすする。

「ミルクと砂糖はいいのか?」

「いらない。先輩、ミルクティー好きなんだ」
俺はキチンと用意されたミルクを見て言った。

「いや、俺は入れないんだけど、いつも英二が使うからつい持って来ちゃったよ」


いつも…か。
エージ先輩は俺の知らない大石先輩をどれくらい知ってるんだろう。


「あいつ、俺がいくら言っても絶対砂糖三杯入れるってきかなくてさ。せめて二杯にしろって何度も言ってるんだけど…」

楽しそうにエージ先輩の話する大石先輩…やだ。

俺が嫉妬するって思わないのかな?

先輩は俺の事で嫉妬したり…しないのかな。


「越前、飯は食って来たのか?」

エージ先輩の話が終わって少しホッとした。
「ん…朝食べただけだけど…」

「腹減ったら言えよ。何か作ってやるから」

「大石先輩、料理できるんスか?」
「簡単なのだけな」
すごい!でもエプロンとか似合いそうだし、料理上手そうかも。

「すごいっスね」

「全然すごくないよ。俺なんかより、英二の方がずっと上手いぞ。この間作ってもらったオムレツは最高に美味かったよ」


…。

何で?

どんな話題でもエージ先輩の事ばっか。


「…先輩…エージ先輩の事ばっかり話してる…」
「そうか?まぁ、いつも一緒にいるしな」

大石先輩にとっては普通の事なんだ。


当たり前のようにエージ先輩と一緒にいて…
当たり前のようにエージ先輩の話ばっかで…。


「…何でそんな楽しそうにエージ先輩の話するの?」

「…え?」

「先輩…俺よりエージ先輩と一緒にいる方が楽しいんじゃないの?」


大石先輩、すごい驚いた顔してる…。

俺の顔見つめて。


イヤミっぽく言い過ぎたかな。


少しの間、無言で見つめあって…

まばたきをした。




涙がこぼれた。


「越…前…」

「あれ…?俺…?」

勝手に…ボロボロ涙が溢れる。


「俺…何で泣いてるんだろ…?」
自分の涙に驚いた。

「…越前」

止まらないよ。


先輩は何も言わずに、泣いてる俺を抱きしめてくれた。

俺も大石先輩の背中に手をまわしてギュウっと強く抱きつく。


「ごめん…不安にさせたんだな。でも俺が好きなのは越前だけだから…」

「先輩…」

「足りないなら何度でも言うよ。好きだよ…越前。大好きだよ…」


涙が伝う頬にキスされた。


瞼にもキス。

少し見つめあって…。





本当のキス…した。







→続き




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