ラブボンボン

























痩せた枝がピュウっと吹く風に踊る。
道路に死んだ葉が割れて散乱して、お天道様も見えない。

















くそ、なんで今日に限ってこんなにカバンが重いんだ。
あ、ユカコにガラスの仮面借りまくったからだ。
無茶して、こんな一気に借りなきゃ良かった。
重すぎ!










ガードレールに腰を預けて一休み。
ほっぺたが冷たい、指も冷たい、壊死すんじゃねぇ?(しないけど)
こりゃさっさと家に帰った方が賢明だな…。
2月に入ってから急に気温が下がった様な気がする。














再放送でやってる大好きだったドラマは最近見忘れがち。





















曲がり角にふかふかの白い猫。
毛皮かぁ、いいなぁ。
おいでおいでしても、勿論来ない。
生意気な奴め。
フンと聞こえてきそうな態度。
脇に置いたカバンを持ち上げ、商店街のなんちゃらフェアーとかが目に入ってくる。













そうだよ、世の中はバレンタインデーとか言う不可思議な行事に浮き足立っている真っ最中なんだよね!















別に。
私、彼氏いないし。
てか好きな子いないし学校の男子なんて臭いし下品だしカップヌードルばっか食ってるし、なんかイヤ。
ユカコは14日は学校休んで手作りチョコだとかほざいてる。
チョコ作りにそんな時間かかるの?
溶かして固めるだけじゃないの?
手作りなんてあげた事ないから知らないんだけどさ。
今年も父ちゃんにあげて、見返りをむしり取ろう。












「ぎゃあっ…!」













カバンが目の前を飛んでいく。
視界が、あれ?



店先のコンクリの台座に思いっきり足を引っ掛けたみたいで、私はコケた。





バレンタインの大バカやろう!









「大丈夫っすか…」






視線の先にはアスファルトの上にスニーカー。
あ、プーマだ。









あんま構わないで下さい、ごめんなさい、もう超恥ずかしいっす!!



「あの、カバンの中身。すげぇブチまけてるんすけど」

「うっそ?あ、ありがとうございます…」








いい加減、体起こしてスカートをパンパン叩く。
すっごい恥ずかしい、しかも男の子が助けてくれちゃった。
漫画、ちゃんと揃えて渡してくれる。
ようやく、目を合わせた。
ありゃ?










不思議そうに私を見つめる男の子。
あ、青学の子だ。






「「あぁぁっ!!!」」






「海堂くんっ!?」

先輩っすよね?」








私の後輩だった。
この目つき、変わってないなぁ。














「ひっ、久しぶりだねぇ!あははは…」

先輩、大丈夫っすか?」

「あ、うん。うん、平気。よくある事だもん、いやー」

「膝」

「ん?」

「血ぃ出てますけど」

「うっそ、わぁ…」






微細な砂利が血液に混じって張り付いてる。
病は気から。







「ちょっと」

「はぁぁ…転んだぁ…」






見ない、傷口見ない様にしないと!
カバンの中に、がすがすペンケースとか突っ込んで手を引かれる。
私は、なすがまま。
行動早い海堂くん。




「うぅ、ごめん。もういいよ、家近いからさぁ…」

先輩に久々に会ったかと思ったら、凄い場面でしたね」

「もういいの、いいよ。恥ずかしいじゃん」



私の家の近所の公園。
子供の時は良く遊んだ公園、ベンチが以前より小さく見る。
あのブランコの角に頭を強打して泣いた事あったなぁ。



「ちょっと座って待っててください」

「はぁい…」






なんだか私、アホですな。
海堂くんは昔からやさしい子だ、態度とか目つきとかおっかないんだけど結構モテ男子だった。
私の同級生でもファンの子とかいたしなぁ。
もう彼女とかいんのかな、いひひ。






しかし寒いなぁ。
ついてないにも程があるよ。
そういや今朝の目覚ましテレビのランキング、悪かったっけな。














ま、あの子が帰ってきたらジュースでもおごって帰るか。
膝がジンジンヒリヒリ、嫌な熱が傷に集まる。





















「すんません、遅くなって」




海堂くんが帰ってきた、なんか抱えてる。
走ってきたんだ。





「本当ごめん、なんか世話かけて…」

「膝、手当てしますから」




わぁ、救急箱持ってきてくれたの?
まじ?
律儀すぎだよ、海堂くん。
なんか申し訳なさすぎなんすけど…。







「もしかして家帰って、また戻ってきてくれたの?」

「はい、手当てしないといけないっすから」

「ありがとう、いいよ、自分で出来るから」

先輩、血。苦手じゃないすか」





俯き加減にそう言って、脱脂綿と消毒液の準備をしてくれる。
そうなの。私は女のくせに血を見ると具合悪くなってしまう体質なのです。












部活の時に桃城が顔面に直球くらって鼻血吹いた時も、私はマネなのに
大石に任せてコートの隅で項垂れてました。






てか、そんな事まで覚えててくれたんだ。







「あはは…じゃあ、お願いします」

「先輩。膝、ちょっと立ててもらっていいすか?」








海堂くんの手が、私の膝頭に触れる。
なんか、ちょっと、これ。
どきどきしてもいい設定?












「いっでぁぁ!」






滲みる滲みる!痛いっ。
消毒ってこんな痛かったっけ?
じゅわぁって。














色気なんてどっかへ吹き飛びました、ハイ。






「暴れんなよな、もう少しなんで」




「ふぁい…」


年下に怒られたー。
真剣な目、いつの間にか私の肩には海堂くんの学ランが掛けられていた。
寒いのに。
なんか罪悪感でいっぱいっす。







「ちょっと、足。先輩っ…」

「痛いよー!私、変なバイ菌貰ってきちゃったのかも」

「じゃなくて、もっと」

「痛いーっ」

「閉じろっていってんだろっ!見えんだよっ…」








もう底辺まで落ちた気がします、先輩わ。













「ちょっとは得したとか言えないのかな?……ごめん」

「相変わらずっすね」



はき捨てる様に言わないでよ…。
手当てが終わって、でっかい絆創膏が膝に張られていた。
なんかさっきより、海堂くん冷たい。
パンツ見えたから?
今日のパンツが黒だったからかな。
乙女は白じゃなきゃいけないから?
どうでもいいけどさ…。







「変わってないかなぁ」

「はぁ」

「女は環境に慣れるのが早いのよ」

「そんなもんすかね」






会話なんて弾まない、だって海堂くん怒ってるみたいだし。
この子、人間嫌いなんじゃないかって態度。
そろそろ帰ろかな、とか考えてます。
ちょっと居た堪れないです。







海堂くんは手持ちぶさたに、しきりの自分のカバンの取っ手を触っている。
横顔、目が強い。
さらりと風が二人の髪を乱す、なにやってんだろ私。










「あのさ、そろそろ帰ろか。今日はありがとう」

「…はい」

「また、うん。学校の方にも遊びに行くよ、見に行く」

「いいっすよ、来なくても」








『あ、そうですか…』













ま、学校が別になっちゃえばこんなもんかな。 ちょっと、寂しいけどね。






先輩」








ベンチでウダウダしてる私に振り返る海堂くん。
スニーカーの踵が土壌を蹴ってる。
どうしよう、説教とかしだしたら。(まさかね)

































バレンタインに間に合わなかったら恥ずかしいので、早めに書いておきます。














→続き








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